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ふと思いついたネタを忘れないうちにメモ。
駄目だ。駄目だ。何をしても、何を見ても。何処にいても、何処を見ても。椛の影が離れてくれない。 気がついたら彼女と同じことをしていた。なんでだろう。ペンを齧る癖も、耳を触る癖も、昔はなかったのに。いつからだろう。ペンに髪痕がついて、耳を触っていないと落ち着かない、気付けばそうなってた。 「っぅ、ぁ…くぅ…う……」 全部が全部、椛のせいで。おかげで。 雨が少しずつ満ちていくように、椛は私の中で存在を膨らませていたのだ。 もう椛がいないと私はきっと死んでしまう。だって側にいるのが当たり前だったから、ずっといてくれるのが当たり前だったから。私があれをやりたい、これをしたいといえば、困ったように笑いながら何でも叶えてくれたから。 振り向いたら帰る道なんかとうに無くなっていて、前にある進む道も椛がいなければ歩いていけなどしない。 引っ張っているつもりが、本当に引っ張ってくれていたのは椛だったんだって、やっと気付いた。 「もみじ………」 あなたが、好きです。 「文様」 するはずのない声がして、痛くなるくらい勢いよく振り向いた。涙が滴り落ちて原稿を濡らしていくけれど、そんなことに構えるはずがない。 「…なん、で…?」 「においがしたから」 ちょん、と自分の鼻頭を指す。白狼天狗は鼻が利くんです。そう自慢げに笑うのは、間違いなく椛だった。 眩しくなるほどの銀髪と、ころころ色を変える橙の瞳と、夕暮れのような笑顔をもったひと。 「涙はね、悲しいにおいがするんです。文様からそのにおいがして、思わず飛び出てきちゃいました」 そのまま彼女が近づいてきて、やさしく私を抱きすくめる。びくりと身体が無意識に強張ってしまったけれど、おずおずと抱きしめかえした。あたたかいぬくもりがじんわりと伝わる。 「泣かないでください文様。貴方に泣かれてしまうと、わたしは何をすればいいのかわからなくなる」 椛は涙で濡れている私の頬を、犬のように舐めた。なんだ、いつもは犬って言うと怒るくせに、犬みたいな行動をしてるじゃない。 少し離れて、がしりと椛の頬を手ではさむ。そのまま引き寄せて、額をくっつけた。見つめあう。キスが出来そうなくらいに近い。目の前に彼女の顔が広がる。橙色の瞳に、黒い私が映る。 「そばにいて。だきしめて。私が泣いていたら、側にいて抱きしめてほしい」 がぶり。痕が残るくらいに、強く椛の鼻を噛んだ。最初こそ驚いて身を固めていたけれども、次第に解れて行って、いつもの、私の言うことを全部叶えてくれる困ったような笑顔を浮かべた。 「痛いですよ」 「椛の噛み癖が移っちゃったの」 /地の文の少なさが目立つなぁ。 PR この記事にコメントする
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