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飛びのったら行き先ちがう
愛が暴走中、爆弾は投下された。
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小悪魔とパチュリーの話。
決してぱちゅこあもしくはこあぱちゅではない。

 
 
 この気持ちはなんだろう。
 答えはすぐに浮かび、しかし認識する一歩手前のところでかき消した。
 この気持ちを"それ"と認めたくなかった。

「……小悪魔」
「なんでしょう、パチュリーさま」

 わたしはパチュリーさまの使い魔として、図書館の司書を任されている。主に魔理沙さんの手によって荒らされた本を整理するのが仕事である。他にも咲夜さんに代わって紅茶を淹れたりもする。味は、やっぱり劣るけれども。
 今日も今日とて荒らされた本を整理していたら、唐突にパチュリーさまに声を掛けられた。手を止めて振り向き、返事をする。
 めずらしい。彼女がわたしに声を掛けるのは、たいてい客人(アリスさんとか妹さまとか、一応魔理沙さんもふくむ)が来たときぐらいなのだ。そうでもない時に声を掛けることは、今までで、そう、両手で足りるか足りないか、その程度。
 普段のパチュリーさまは本をずっと本を読んでいるから自然とそうなる。ましてやお互い、積極的に話を掛ける性分でもないから、余計に。それでも何一つ不便は感じないからこのままで良い。少なくとも今現在は。

「貴女、恋でも患ってるの?」

 ――――は?

「ぱ、…ぱちゅりー……サマ?」

 この百年魔女は何と言いやがりました?
 こい? 濃い? 来い? 故意? 鯉?
 ―――――恋?

「in love. 恋愛の恋のことよ。…変な方向に取らないでよ」

 しばらくの間、きっと彼女に間抜けな顔を晒していたと思う。開いた口が塞がらないとはこういうことなんだろう。
 最後に付け足された言葉は最早耳に届いていなかった。その前に意味を悟ってしまったから。
 パチュリーさまは口を開けたまま固まったわたしを訝しむように見つめる。小悪魔、小悪魔? 声が聞こえた。怪訝を帯びたその声で名を呼び掛けようとも、今のわたしにはそれに答えられるまでに思考回路は回復していない。
 いまだに頭の中では、彼女の先程の言葉が響き渡っている。

『貴女、恋でも患ってるの?』

 無意識、無意識に、ほんの数瞬の無意識に載せて、パチュリーさまの言った言葉に答えていた。

「恋、……なんて、そんなのじゃありませんよ」

 ちがう。ちがう、ちがう。
 恋じゃない。
 恋なんてものじゃない。
 そんなのじゃ、ない。
 絶対に絶対にそんなのじゃない。
 あの人を見るたびに心が躍っても、あの人の姿に釘付けになっても、あの人の声に聞き惚れても、あの人に触れたいと思っても、あの人を愛しいと感じても、それは絶対に恋なんてものじゃない。

「小悪魔」

 名前を喚ばれ、無意識から意識を取り戻した。はっと焦点を目の前の魔女に合わせ、姿を視認する。
 彼女はわたしを真っ直ぐ見つめていた。
 矢のように、ナイフのように、光のように、まっすぐわたしを見つめていた。

「貴女は……恋を、患っているわね」

 わたしは震える声で言った。

「            。」

 この気持ちが恋だとは、この先もずっと認めないだろう。認めてしまえば同時に叶わないと判ってしまうから。
 すこしでも良いから、夢を見ていたかった。

 ■■しています、お嬢さま。







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受験生なにやってんだ勉強しろ。
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